chapter.24 | 夏の始めに ベランダのプランターに シソとバジルを 植えてみた 夏の日差しで グングンのびた けれど7月の台風で 一番背の高い シソが一本 ポッキリと折れてしまった 母はそれを見て 言った 「それは もう元には 戻らないから」 「折れた所から ちぎりなさい」 「そうすれば」 「新しい枝がのびて」 「また新しい葉が きれいに しげってくるから」―と でも 私には それが ためらわれた どうしても だって 枝の先についている 小さな葉たちは まだ元気だったのだ 折れる前と ほとんど 何ひとつ 変わる事も なく― |
chapter.24 | ホントに ホントに 似合う? 変くない? 大丈夫? おでこ出してて おかしくない? |
chapter.24 | その たった ひと言が ききたくて 髪を結って キモノを選んで 大さわぎして 着付けして 慣れない下駄を 履いて ・・・・・・・ ドキドキして 他の誰の為でもなく あなたのその ひと言のために 願いを込めて ほんの少しでも 少しだけでも あなたの心が 私に かたむいて くれないかって― どうして私は 夢をみてしまうん だろう くり返し くり返し あきもせず バカの ひとつ覚え みたいに ― 数日たって ベランダに 出ると 折れたシソが 自分の重さに 耐えかねて 土の上で のたうっていた 母さんの 言う通り だった これは 折れた所で ちぎるしかなかった そこで ちゃんと区切りをつけて 新しく枝を伸ばすより 他になかったのだ それでも まだ私は 迷ってしまうのだ どうしようもなく |
chapter.27 | 真山の 匂いがする ヒトの匂いって 不思議 特別に何か つけてるって訳では なさそうなのに すぐわかる 真山の匂い シャンプーと お洗濯の匂いと それから少し これはタバコの・・・・・・・・・ |
chapter.30 | 先生 ・・・・・・ 私 今まで 真山のコト 「バカバカ」 「ひどい」って 思っててね 「こんなに好きで好きで好きで ずっと好きなのに」 「なんで 私じゃないの?」 ―って ―でも ―じゃあ 私だったら? もし 商店街の みんなが 「こんなにスキなのに なんで俺たちの誰かじゃ ダメなんだ!?」って・・・ 私を 責めたら? 「こんなに ずっと好きだったん だから」 「この中の 誰かを 選べ」 ―って 言われたら 選べません 大事だけど 本当に 大事だけど・・・ 一緒にできない 先生・・・ そうだ・・・・・・ やっと わかった 真山はきっと こんな 気持ち だったんだ ねぇ 先生 私 みんなに何て 言ったらいいの? 自分が 言われて 辛かった事を 今度は私が みんなに言うの? どうしたら いいの? 先生 |
chapter.31 | どうか しあわせに ・・・・・・・・ どうか みんな みんな かみさま おねがいです 私たちの上に みんなの上に どうか等しく この雪みたいに しあわせを・・・ |
chapter.33 | あ そういえば私も 欲しい本が あったんだ 丁度 私も 伊勢丹の2階に 行こうと思って たんだ たくさんのコトバが おしよせ たけど 一緒に 新宿まで 行こうかな どれもあまりに わざとらし すぎて 行っても いいかな はずかしくて 口にも 出せなくて ただ 私の大好きな 茶色い髪が 冬の陽に透けるのを ぼんやりと 見ていた 「ねぇ真山 今の会社は どう? このまま 2人だけなの? 他の人入れないの?」 自分できいた クセに 真山の口から出た 「2人で」という言葉に ビックリする程 胸が痛んだ ―そして・・・ 「ふーん 楽しそーだね」 「あ・・・」 「ゴ ゴメンネ あ 私 あっちだから」 「じ・・・ じゃあね がんばってね」 |